行政書士法第19条の改正について

令和7年6月6日、参議院本会議で「行政書士法の一部を改正する法律案」が可決され、行政書士法第19条がついに改正されました。
今回の改正では、無資格者による代行業務を「いかなる名目の対価であっても禁止する」ことが条文上で明確になり、行政書士の独占業務範囲が実質的に強化されます。施行は令和8年1月1日から。まずは改正のポイントと実務への影響を整理してみましょう。

区分改正前(要旨)改正後(要旨)
条文番号行政書士法 第19条(業務の制限)同左(条番号に変更なし)
主たる規定行政書士(法人を含む)でない者は「報酬を得て」行政書士業務(第1条の3)を 業として行ってはならない他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という語句を挿入し、1️⃣ 名称を変えても実質的に対価を受ければ「報酬」に該当することを明確化。2️⃣ 例外として、  • 他法令に別段の定めがある場合  • 定型的かつ容易と総務省令で定めるオンライン手続について、相当の経験・能力を有すると総務省令で定められた者が電磁的記録を作成する場合―は許容。

今回の改正が必要とされた主な理由は次のとおりです。

  • 無資格者による“手続きコンサル”の横行 ─ 名称を変えて対価を受け取るグレーな代行ビジネスが拡大し、取締り強化が求められたこと。
  • オンライン申請の急増 ─ IT事業者が大量処理する定型手続きが増え、資格者との線引きを条文で明確化する必要があったこと。
  • 行政書士の公共的役割の再定義 ─ 第1条を「目的」から「使命」規定へ改め、公益重視の資格像を正面に掲げたこと。

 

では、改正ポイントをチェック!

改正項目変更点変更点など
第1条(使命規定)「行政書士の使命」を明文化心構えでしょうか。
第1条の2(職責規定)デジタル社会対応を職責に追加DX支援が正式業務の一部に
第19条(業務制限)「いかなる名目でも報酬を得れば無資格代行は違法」と明確化“月会費”“成功報酬”モデルはアウト
両罰規定無資格業務で法人・代表者も罰金対象外部委託・提携の見直しが必須
特定行政書士審査請求代理の範囲拡大特定行政書士が使える資格へ
施行期日2026年1月1日

では、業として。ということについてどのように考えていたのか改正前の19条における考え方を整理します

観点ポイント補足・典型例
① 反復継続性単発か偶発かではなく、「また同様の依頼を受けて繰り返す意思」 があれば 1 回の受託でも「業」と評価され得る。・ビザ申請代行サイトを開設し最初の 1 件を受注した段階で 業として
・知人に 1 回だけ無償で書類を作った—> 反復意思がなければ通常は対象外
② 社会的事業性(対公衆性)不特定または多数の相手を対象に、社会通念上 “職業” と認識される態様で行っているか。・Web 広告や名刺で「〇〇サポート」「手続き代行」を標榜→ 事業性あり
・家族・友人の範囲内で内職的に手伝う→ 事業性は通常低い
③ 営利性行為そのものが収益獲得を目的としているか。※条文には別に「報酬を得て」が置かれているが、判例・学説は 業として=営利追求 を予定する概念と整理・「月会費」「寄付」「物品代」に姿を変えた対価も営利性を肯定しうる
・NPO が実費のみ徴収し、余剰を出さない形で行う場合は営利性が弱い
目次

新19条の考え方 ――“依頼+名目不問の報酬”で グレーゾーンを封殺

旧条文では「報酬」概念が曖昧で、“会費”“寄付”“代行手数料” など名目を変えた対価授受が取り締まりにくかったため改正後は「名目不問」+「他人の依頼を受け」条項が入り、業として ≒事業性 のハードルはそのままに、報酬フィルターを強化してグレーゾーンを塞いだ形になります。

条文(改正後)
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない。ただし
① 他の法律に別段の定めがある場合
定型的かつ容易に行える手続で、かつ総務省令が指定する者が電磁的記録を作成する場合――は除く。

テーマ改正前の解釈改正後の解釈
名目替え報酬「成功報酬」「会費」「寄付」は個別判断文言追加で一律 “報酬”
→ 違反が明確化
包括契約の一部コンサル料に書類作成が内包→報酬性認定例あり同様に違反。ただし顧問契約の助言部分はOK(書類作成✕)
単発・無償ボランティア反復・報酬性を欠けば不処罰維持(ただし交通費等の実費支給が“実質報酬”かは厳格化)
法人罰(両罰規定)行為者のみ法人・代表者も処罰対象

さいごに。

SNS等では補助金業務申請の代理作成についても行政書士の専業であるとの話もありますが、そもそも補助金業務については事業者自らが作成し、考えるものでありその補助や書類作成を行政書士などがになってきていました。こちらの業務については今後も中小企業診断士さんや税理士さんと協力しながら中小企業等を支援していく必要があると考えています。補助金申請システムのJグランツなどが改修され、代理申請(委任)ができるようになってきておりますが、こちらの代理人としては行政書士が選ばれるよう行政書士も研鑽する必要があるでしょう。(従前から書類の作成業務が独占業務であり代理申請については規定がない)

本改正は士業の業務独占を担保する制度ではあるものの、その目的は行政書士の権益保護ではなく、あくまで国民の利便性を確保する点にあります。補助金申請書類の作成、農地転用の3条申請、国際業務支援機関への書類提出など、多岐にわたる分野で違反が明確化される一方で、国民生活に無用の混乱を招かぬよう、各士業や事業者が連携し、円滑な運用を図ることが求められます。

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